相談予約をする
営業時間 平日10:00~19:00(土日相談対応可)
アスベスト(石綿)は、熱や摩擦に強く、耐久性に優れていることから、100年以上に渡り、建材、摩擦材、シール断熱材等の工業製品に使用されてきました(現在は原則禁止されています。)。大阪府南部の泉南地域は、古くからアスベスト産業が地場産業として発展し、最盛期には、アスベスト紡織品の国内シェア8割を占めていました。
しかし、次第に肺がんや中皮腫といった深刻な健康被害の報告が聞かれるようになったため、1937年から戦後にかけて国による石綿工場労働者の健康影響調査が実施され、調査結果を踏まえて緊急対策や法的規制の必要性が指摘されていました。
徐々に被害の実態と国による責任の内容が明らかとなった2006年5月、わが国で初めて、アスベスト被害に対する国の責任を問う集団訴訟として、泉南アスベスト国家賠償訴訟が提起されました。
大阪泉南アスベスト訴訟は4つの下級審判決を経て、2014年10月9日、最高裁が、
「労働大臣は,昭和33年5月26日には,旧労基法に基づく省令制定権限を行使して,罰則をもって石綿工場に局所排気装置を設置することを義務付けるべきであったのであり,旧特化則が制定された昭和46年4月28日まで,労働大臣が旧労基法に基づく上記省令制定権限を行使しなかったことは,旧労基法の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,著しく合理性を欠くものであって,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである。」
と判示し、国の責任を認める判決が言い渡されました。同判決では、アスベストに大量にばく露することで症状を発症するとの医学的知見が、石綿肺については昭和33年3月1日頃に、肺がんについては昭和46年頃、中皮腫については昭和47年頃には固まり、これを国も認識していたと指摘した上、アスベスト対策としての局所排気装置の有効性と当時の技術的知見においても設置が可能であったと認定し、「上記期間内に石綿の粉じんにばく露したことと石綿関連疾患との間には相当因果関係が認められる」と判断しました。
一方で同判決は、国が防じんマスク着用の義務付けや濃度規制を強化しなかった点などは、「著しく合理性を欠くものではない」として国の責任を否定しており、近隣ばく露や家族ばく露の被害者の請求もは認めませんでした。
このように、アスベスト工場労働者の被害に関する国の責任全てが認められたわけではありませんが、工場や建設現場で働く方の命と健康に対し、国が経済発展やアスベストの有用性を理由に疎かにすることは許されないとの司法の立場が明らかとなったことは大きな意義があります。
大阪泉南アスベスト訴訟判決を受け、現在は、アスベスト工場で働かれていた方とその遺族について、所定の要件を満たすことが確認されれば、国と裁判上の和解をすることにより賠償金(和解金)を受け取ることが可能となっています。